稲城についた日は最近完成したと言われる、形ばかり立派であまり機能的ではないホテルに宿泊に成りましたが、近所にある個室になっている温泉には満足でき、気分もリフレッシュしました。
26日からヤーディンと言う村からトレッキングを開始しました。馬2頭に食料や寝袋を乗せ、私達は各自10キロぐらいのザックを担ぎ沖古寺を目指します。日本で考えていたよりも開発されたこの土地は、中国各地からたくさんの人が訪れ、また道も予想に反して整備され、まるで秋の上高地を歩いている様でした。僻地での旅を予想していただけに少し拍子抜けしてしまいました。この日も天気は悪く、シャルオドジェ等の山が見えるはずでしたがそれらは雲の中でした。宿泊は4人で布団付きの大きな小屋を占領して使いましたが、他のトレッカーがいないのでのんびり食事の用意が出来ました。この日の夕食はパスタにビン詰めのトマトソースという単純ですが久しぶりに食べなれているものをいただきました。
翌日も雨の中、ベースとなる4100メートルの大地を目指しましたが、のんびり写真を撮りながら歩いたのに2時間で着いてしまいました。この日の宿は63歳のおじさんが40年前に作ったと言う、ヤクを放牧するときに使う小屋を、1日一人25元払って使わせてもらう事になりました。途中の道まで私達を泊まらせるために営業に来たので泊まるしかありません。石で囲われ焚き火の煙で充満した小屋は、思っていたよりも快適でこれから3日間滞在するのに十分の場所です。翌日も天気は悪かったのですが、4500メートルの五色沼まで散歩。小屋に戻り香辛料が効いたインスタントラーメンを食べ出血した足を治療していると、未踏峰の一つシャルオドジェ5958メートルがついに雲の間から現われ始めました。数年前に挑戦したディスカバリーチャンネルのルートはなかなか良い所を選んでいますが、頂近くはかなり難しそうです。次の日は全員で小屋近くでボルダリングをして過ごしました。中国人ガイドは、もともと十種競技の選手だけあって初めてにしては良い登りをしていましたし、何よりも楽しんでいました。夕方にはやはり未踏峰のヤンメーヨンも顔を出し、計画している訳でもないのに思わず可能性のあるラインを目で追ってしまいます。夜は残っている野菜をふんだんに使い、炒め物にスープ、友人がくれた燻製の肉にライスと言う豪華版でした。
山の中での最終日は、私が最も楽しみにしていた未踏峰のシャラリ6032メートルの周りを一周するトレッキングです。この日はなんと快晴。未踏峰3山がすべて見え4500メートル以上の峠を2度も超える歩きは12キロ近くありましたが、雪あり深い森ありと変化にとんでいて飽きる事はありませんでした。10時間近く歩いたので、最終的には足を引きずりながらでしたがメインイベントとして満足いく日になりました。 この後私達は成都に戻る事になりましたが、写真集を見たときから気になっていたビッグウォールがスークーニャン近くで見られるということで、少し遠回りをしてもらい偵察に行きました。予想していた岩質とは少し違いがありましたが、1000メートル以上ある素晴らしく魅力的なビッグウォールで、本気になって双眼鏡で可能性を探ってしまいました。ひそかにこの壁を復帰第一戦にと思ってしまいます。10日間以上の登攀と思われるこの壁は確かに難しそうですが、やりがいのあるものを見つけた気がします。