2年以上前から考えていたクーラカンリ北壁は雪崩の危険性が高いので、隣に鋭く聳えるカルジャン峰(7200m)に単独でアタックしましたが6300mを最高地点に下降してしまいました。
現在は奇妙な感覚です。今まで何度となく目標のヒマラヤの高峰に登れず悲しい思いをしてきたのに、今回は力を出し切ったわけでもないのに悔しさがほとんど無いのです。26歳からヒマラヤに通い、そして情熱を注ぎこんでいた思いがぷつりと切れてしまったのでしょうか。
山の状態も体調も悪かったので登れなかったのは仕方ないのですが、いつにもなく行動中に自分の能力に疑問を感じていました。また以前にも増して山で死ぬのが怖くて、無事に家に帰りたがっている自分は昔とは少し違っていました。ヒマラヤンクライマーとして終わってしまったのでしょうか。燃え尽きてしまったのでしょうか。確かに今でも登ってみたいフリールートやアフリカや南極の岩峰や山に興味がありますがヒマラヤはと言うと・・・
それでも荒々しい氷河、真っ青な空、巨大な山脈、それらから別れを告げることは出来るだろうか、はたして残りの人生をほとんどリスクを感じないクライミングだけで過ごせるだろうか、少し疑問が残ります。