3月上旬　昨年に引き続き、アメリカはザイオン国立公園に行って来きました。前回登れなかったマスターブラスター(5.13＋)を成功させたいと言う思いからです。今まで2年連続して挑戦してきた山や岩は幾つかありました。90年冬のパタゴニアはフィッロイ、05年の中国は四川省のポタラ北壁、12年のヨセミテのヘブン。それらは2年目に完登しています。強い思いとトレーニングの繰り返しにより、頭の中で描ける目標は達成できると信じていました。マスターブラスターは僕にとってはかなり困難な対象ではありましたが、魅力的なルートでした。しかし残念ながら何度となく繰り返しトライしましたが、今年も登ることは出来ませんでした。悔しいですが僕には一生登れないのかもしれません。日本に戻ってみるとさらに辛い事が待っていました。

成田空港に到着してから3時間後、多くの登山を共にした友人の遭難の知らせが届きました。翌朝、現地に向かう車の中で、彼との幾つもの登山を思い返していました、夢のブライダルベールの氷、千波の滝の氷　富士山頂でのトレーニング、穂高の岩場、そして昨年の二人で行ったぺルーアンデスでの1ヶ月間のクライミング。思い返すと彼は常に全力で、そして悲しいほど登山が好きでした。そんな彼と来年の春は再び大きな山に挑戦してみたいとも考えていました。今この文章を書いている部屋に、彼が残した沢山の登山道具があります。いつも背負っていた黒いザックは主を失って寂しそうに見えます。