久しぶりに三つ峠に行った

2016年6月27日

久しぶりに三つ峠に行った。古典的な場所ではあるが、方法によっては充実し有効な練習が出来ることを実感した。
ボルトやロックピトン等の残置物を一切使用せず、自分でカムやナッツをセットしつつ登ると岩を見る目が養える。また大きな山で声が届かないことを想定し、クライミングも懸垂下降も無言で行うと、岩場が静かなうえパートナーが何を考えているかを想像できるようになる。

三つ峠に一緒に行った知人達は、当時はリードで登れば自慢できたルート「大根おろし」を知らないと言うので見に行くことにする。「大根おろし」は高低差80メートルの岩場の上部に位置している、僅か10メートルほどのルートではあるが、全くプロテクションが取れないので、もしも途中で落ちたら・・・かなりヤバい。仮に助かっても大怪我は免れない。そこでリードで登るクライマーは、技術的には難しくないものの大きな勇気を必要としていた。

深い霧の中、「大根おろし」に到着すると、銀色のボルトが幾つも埋め込まれていた。当時高校生、緊張しながら必死に登った岩は、皆が安全に楽しめる岩に変わってしまっていた。救いはボルト位置が当時のクライマー達が果敢に挑戦したラインから、少し外れているように思える事だ。しかしそのボルトを見つめていると何か淋しさが胸に広がった。それは僕らが登った群馬県の西上州の絶対に落ちてはいけない岩のラインに、現在では無数のボルトが打ち込まれている事実を聞いた時と同様の淋しさだった。

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