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6年前のヒマラヤクライミングの準備の際、軽量のカムを探していると、「ヒマラヤに持って行っていいよ」と知人からドラゴンカムを3つ渡された。その時、彼はすでに重い病気だった。あれ以来、僕は青色のそのカムを愛用してきた。
翌朝、再び三つ峠に向かった。天気予報は正確だった。雨、風ともに強かった。山頂に到着した時は、汗で体も冷えた事に加え、古い雨具からは雨が浸透し、とても寒かった。昨日同様に再びロープで降りながら丹念にクラックの中を覗き込む。やはり無い。身体を動かしていても震えが止まらないほど寒い。昼近く、僅かに見つけられる可能性が残されている鶴ルートを友人が降りていく。雨も風もますます激しくなってきた。これで駄目だったら諦めようと思っていたその時、下の方から「見つかった」の小さな声。それから20分後、全員が大地に戻った時、クライミングと似たような大きな達成感を震えながら皆で味わった。
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