
既にボルトは存在していないと思われたが、ツタの間に数本残されていた。誰も来ないことを確認してトンネル横の石垣を登ってみる。ホッとした。あの頃よりも下手になっているのではと思われたが、とても易しく感じられたからだ。
翌日は家からさらに距離のある千葉城に向かった。中学生の頃は毎週末のように通っていた場所だ。城の石垣も登ってはいたものの、真剣に登っていたのは文化会館の横にある壁だった。高さ7m?セメントに小さな石がちりばめられ、三つ峠のような感触の壁であるが、脆い箇所が多くあった。最初の頃は工事用のロープを使用していたが、何時からかロープを使用するのはルール違反に感じはじめ、ノーロープで試みるようになっていた。しかし実際に成功したのは4回くらいではなかっただろうか。怖さに負けて、ほとんどは途中から降りていた。その当時履いていたのは運動靴、難易度も5.9以上あっただろう、そのうえ上部から落ちたらアスファルトに叩きつけられ怪我をするのは間違いクライミングだったからだ。

あの当時から安全なクライミングジムが存在していたら・・・僕は現在のような冒険的なクライミングをしていなかっただろうと。
それにしても・・・成功した時の感覚を今でも覚えていたのは驚きだった。
